認知症とは、いったんは正常範囲と呼べる認知機能が何らかの原因で生活するうえで社会的に支障をきたしている状態をいいます。
認知症はうっかり忘れるなど生理的な加齢に伴う認知機能低下やうつ病や統合失調症などの精神疾患とは区別されます。
いくつかの認知症のタイプを以下に述べます。
【アルツハイマー型認知症】
認知症のなかでは、もっとも多いタイプになります。
病初期から時間的な昔の記憶は比較的鮮明に憶えているにもかかわらず、数分から数日など近い記憶(近時記憶)の障害が目立ちます。言語では、「あれ」とは「それ」が多くなったり、名称や呼称が出てこなくなったりします。近時記憶の障害により何度も同じ話をしたり、連日同じものを買ってきたりなどの症状を呈します。また、車の車庫入れや図形の模写などが困難になってくることがあります。聞かれた質問に対してはぐらかしたり、怒ったりするなど多く見られます。
診断については、頭部MRIで脳腫瘍など物忘れを起こすような疾患がないことを確認するほかに、海馬と呼ばれる記憶の部分の萎縮を確認します。脳血流シンチグラフィーと呼ばれる脳の血流を調べる検査ではアルツハイマー型認知症で血流低下が見られる領域の確認することが可能です。
根本的な治療はいうものは現在のところありませんが、進行を少しでも遅らせるために治療薬として内服薬3種類、貼付剤1種類があります。
【血管性認知症】
脳を循環する大小の血管の動脈硬化による脳梗塞や小さな脳出血による認知症です。症状としては認知症のほかに、思考の遅延や意欲の低下、飲み込みの障害、歩行障害などを伴うことが多いです。
診断としては、認知症の存在、MRI画像による病変の確認を確認する必要があります
こちらのタイプについては、生活習慣病をしっかりと管理することによりこれ以上悪くならないようにしていくことが重要になってきます。
【レビー小体型認知症】
このタイプでは認知症以外に手の振るえ、身体の動きが鈍くなったり、歩行がゆっくりで歩幅が狭くなったり、顔の表情などが乏しくなってきたりします。
子供がいる、虫がいるなど明瞭な幻覚が存在するのが、この認知症のタイプで比較的特徴的なものです。
また、便秘や日中の過眠、起立時の血圧低下なども多く見られます。
こちらについては、1種類のみ保険適応の薬剤があります。
【前頭側頭葉変性症(前頭側頭型認知症)】
細かいいくつかのタイプはありますが、万引きをするなど社会的に不適切な行動、特定の動作や作業に対して固執した、言語の理解物品の理解の障害、言葉が出ない、文法の誤りなどを呈するタイプの認知症です。
【そのほかの認知症様症状を来す疾患】
転倒などの原因により頭の中に血腫ができる慢性硬膜下血腫、脳腫瘍などの腫瘍性疾患、甲状腺ホルモンの低下によるもの、アルコールや偏食や摂取不足などによるビタミンB1低下によるもの、そのほか肝不全、腎不全などによるものなどが挙げられます。これらの中には早く診断・治療に至ることで改善することもあります。
我が国の超高齢化に伴い、4人にひとりが認知症もしくはその予備軍といわれ厚生労働省の統計では2012年に462万人、2025年には約700万人になるといわれています。
多くの認知症は根本的な治療はまだ確立していないものの少しでもご本人やご家族が健やかに生活できる一助になれればと思いますので以下のような症状が見られる方はお気軽にご相談ください。
物忘れが多くなった。
同じことを何度もたずねる。
怒りっぽくなった。
道に迷うことが多くなった。
今まで好きだったことに対して興味がなくなった。
被害妄想がみられるようになった。
仕事や家事ができなくなった。
性格が以前と変わった。
食べ物の趣向が変わった。
薬の飲み忘れが多くなった。
同じことを繰り返すようになった。
寝ている際に寝言が多い。
涙もろくなった。
家に引きこもりがちになった。
居ないはずの人やその場にないものが見えているようなことがある。
約束に時間などを忘れる。
身だしなみを気にしなくなった。
尿失禁などが多い。
歩行時に足がすくむようになった。
話し声が小さくなった。
当クリニックでは問診、認知機能検査(長谷川式認知症スケール、ミニメンタルステート)、血液検査(甲状腺やビタミンなど含めて)を行います。
頭部MRI検査や脳血流シンチグラフィーなどの検査については、ご自宅から近隣の医療機関に検査のみお願いして結果は当クリニックで
結果説明させていただきます。
[画像検査費用]
3割負担の方 頭部MRI:約1万円、脳血流シンチグラフィー:約24000円
1割負担の方 頭部MRI:約3500円、脳血流シンチグラフィー:約8000円となります。